まちへ、森へ。

横浜ベイサイド、昂る秋の一日

3.RWC2019・横浜ファンゾーンの臨港パーク

 

2.海上自衛隊フリートウィークの大さん橋、赤レンガパークはこちら。

 

 

臨港パークに設けられたラグビーワールドカップ2019・横浜ファンゾーンへ。

 

 

 

こちらには日本代表「桜のジャージ」をまとったファンが続々と集結。

 

 

 

ファンゾーンのゲート。

 

横浜のファンゾーンは臨港パークの敷地を利用して40,000uの広さを確保。12開催都市で最大の規模となった。大型スクリーンの観戦エリアも1,500uある。

 

 

 

建設が進む正面のビルは、会員制都市型リゾートホテル「横浜ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート」と一般向け都市型リゾートホテル「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」の複合ビル。

 

 

 

大テント。

 

 

 

テント壁には前回(2015)大会の日本代表がプリントされている。

 

前回大会の南アフリカ戦ではニュース映像を見た多くの日本人が決勝トライのシーンを見て「外国人ばっかりじゃないか」という声を挙げていたことが思い出される。
今回の大会では事前に代表チーム・選手のテレビ特番も多数放送され、ラグビーの代表が多国籍の混成チームであることについて多くの人々に違和感がなくなっていった。代表選手たちが試合開始前の国歌斉唱で「君が代」を高らかに歌い上げる姿からは、試合前の高揚感を共に分かち合ったという人たちも多かったろう。

 

とはいえ、ヤフーを始めとしたポータルサイトのコメント欄には相変わらず「外人ばかりじゃないか」という冷めた見方もある。
そこには保守本流を自認する層の排他的な民族主義的思想が見え隠れするパターンとともに、どうしたことか「多文化共生」を謳っていたはずのリベラルを自認する層からの批判というパターンも散見する(こちらの理由は推して知るべし)。またサッカーとの比較で、それこそフットボール文化におけるアソシエーション(サッカー)とラグビーの違いを念頭に置きながらラグビーにおける代表の在り方を批判するパターンもある。いずれにしても頑張る選手たちを侮辱するような言葉を平気で並べつつ御自身の人生を楽しく謳歌しているのだろうから、そこに共感してくれる方々と共にお好きにされたらいい。

人類はインターネット環境の普及に伴って神の領域にかかわる能力を手に入れてしまった。昔であれば知る由もなかった(せいぜい便所の落書きぐらいでしか目にしなかった)、袖触れ合うこともない市井の人々の心の内をのぞき見る能力である。ただこれが神の能力と決定的に違うのは、表層に現れたその人間の言葉だけではその人間がどのような生い立ちをもちどのような考え方で青少年期を過ごし、どのように人品形成してきたのかが非常に見えにくいことにある。中途半端に神の能力を手に入れてしまったが故、その言われ様に深く傷つき落ち込む人々も出てこよう。そこにどう向き合うことが幸せなのか。この人は(好き嫌いの枠を超えて)信頼するに足りる人なのか。日本人は、一億総モニター状態になっているともいえる。

 

 

 

この日は日本代表にとって三戦目となるサモア戦の当日。キックオフ(19時30分)の何時間も前からパブリックビューイングには続々と「桜のジャージ」をまとったファンが詰めかけている。

 

 

 

開幕戦というガチガチのプレッシャーの中で勝ちきってボーナスポイントまできっちりと獲得したロシア戦。

 

そして戦前の大方の予想を裏切って、前回大会の南アフリカ戦に引き続き「大番狂わせ」の金星を挙げ、再び世界のラグビーファンを震撼させたアイルランド戦。
日本が試合後半に逆転しリードを奪ったまま勝利したその一戦は、まさかの幕切れに中継の解説者さえもが「なんで蹴った?」と思わずつぶやいた。あのアイルランドにボールを蹴り出すことで試合を終わらせ僅差の敗戦によるボーナスポイントを獲得することを選択させた、歴史に残る激闘だった。

 

そしてこの日、長年に渡り苦杯を舐めさせられ続けたサモアに対しジャパンは完勝した。
ラグビーユニオンのプロ化の流れが進んで以降、国の経済事情ゆえに代表メンバーのほとんどが海外のプロチームでプレーすることからチームとしての成熟度を上げていくことがままならないサモア代表ではあるが、一歩間違えればゲームの流れをあっという間にもっていかれる怖さは昔からのラグビーファンの骨身に染みている。それだけに終了間際の劇的なトライによってボーナスポイントを加えて勝利したことは、出来過ぎともいえる喜びであった。そしてそれは、最後まであきらめずにボールを繋ぎ続けたサモアのプライドがあってこそ生まれたシーンだった。

 

 

 

以前日産スタジアムツアーのページで「ここ横浜国際で新たな歴史の一ページを目撃することができたら。それを楽しみに、新たな歴史の瞬間を待つことにする」と書いた。そして迎えた2019年の横浜国際総合競技場(日産スタジアム)。
予選プールの最終戦となるスコットランド戦。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)、リーチマイケル主将率いる「ジェイミージャパン」は、とうとうやってのけた。67,666人の大観衆の前で新たな歴史の扉をこじ開ける、大仕事を。

 

「夢を見ているかのような数週間」の続きは、「夢のような一か月」となって、再び現れた。日本開催となった2019年大会は、この国でラグビーが野球やサッカーのように日常に文化として浸透していくうえでのマイルストーンとなるかもしれない。それくらい、日本代表が快進撃を続ける以前から各国代表チームのキャンプ地やゲーム開催地で見られた事前の盛り上がりようは、素晴らしかった。ホストとゲストが互いの文化を尊重し尊敬しあう関係は、まことに美しかった。
今はただただ、感動的なスポーツを純粋に愛する日本という環境そして文化が誇らしい。そして、この国に生を受けたことに感謝したい。

 

 

ジェイミージャパンの予選最終戦となるスコットランド戦は、ラグビー日本代表がかつて経験したことの無い、異様な空気の中で幕を開けた。

 

折しも観測史上最大級となる台風19号が関東に接近し、試合の開催も危ぶまれた数日前。事前にサインしていたとはいえ「まさかそんなこと(試合中止)はあるまい」と高をくくっていたとしか思えない、スコットランド協会CEOとスコットランド代表チームHCの高圧的な発言の数々は、スコットランドチームのひたむきさを愛していた日本のオールドラグビーファンを悲しませ、にわかにラグビーのファンとなった人々の怒りを増幅させた。法的措置をちらつかせてまで試合をやらせろ、というのは「試合さえすればお前たちに我々が負けるはずがない」という奢りにしかみえなかった。日本国内であれ海外であれ長きに渡る伝統を鼻にかけて相手を軽んじる人々というのはどうしてこうも鼻持ちならないのだろうか。

 

そして試合日の前日。最終的に百名近い犠牲者を出した未曾有の台風は、高床式の人工地盤の上に建つ横浜国際総合競技場(日産スタジアム)の遊水地に想定通りに鶴見川の越流をもたらした。
スタジアムのピッチが抜群の水はけを誇ることは、集中豪雨の中で行われた試合でもピッチに水が溜まらなかったことが「最高レベルの国際的競技に相応しい会場」と賞賛されたFIFAコンフェデレーションズカップ(2001)準決勝でも実証済みではあった(参考「SPORTSよこはまVol.5」横浜とサッカーの歴史)。芝生はラグビーW杯にあわせて天然芝と人工芝のハイブリッドとなり、更なる進化を遂げていた。
とはいえ未曾有の台風が過ぎ去ったあとのグラウンドコンディションは、開催国としての名誉を守るために「なんとしても試合開催にこぎつける」という多くの裏方スタッフの泊まり込みによる情熱的な献身が無ければ、到底ゲームの開催がかなう状況ではなかった。当日の午前中まで鉄道も止まっていた状況下、国内イベントであれば100%中止であることは疑いないケースだった。

 

こうして「さあ、誰にも文句は言わせない」という御膳立てが整った中、犠牲者に対する鎮魂の空気が流れる夜空の下で、日本ラグビー界にとっての世紀の一戦は行われた。
スコットランド協会上層部とワールドラグビー(統括団体)との場外戦による不穏な空気とは裏腹に、両チームの死力を尽くしたゲームは素晴らしかった。スコットランドの選手が先制トライに雄叫びを上げ、密集であそこまでエキサイトするのも、まるで六か国対抗か、はたまた南半球チームを迎えたテストマッチを観ているかのようだった。これはまさしく伝統国同士に見られる死力を尽くした一戦だ。そんなスコットランドに対して、ジャパンは相手の強みを消すためハーフ団のキック戦術を封印し徹底的にボールを回すゲームプランでスコットランドの防御を切り裂いていった。前半終了間際に訪れたPG失敗後のリスタート、その僅かな間隙を逃さずに意思統一してトライを奪い取ったプレーにはゾクッと来た。これこそが海外メディアをして「ジャパンはオールブラックスのようだ」と称賛させた所以だろう。ジャパンラグビーは、明らかに異次元に突入した。

 

 

歴史的勝利に沸きボルテージが最高潮に達したなかで迎えた決勝トーナメントの初戦、スプリングボクス(南アフリカ代表)戦。

 

長丁場の大会期間中リザーブ主体のBチームとレギュラーのAチームを対戦カード毎に使い分けてきたティア1強豪国と異なり全試合をフルメンバーで戦ってきたジャパンの疲労度を考えるとかなり厳しいであろうとは予想されたが、それでもジャパンはあの強靭なボクスを30点以内に抑えた。特に前半までは3対5という、ビッグアップセット再来の予感に武者震いするような展開だった。
ジャパンを研究し尽くしてギアチェンジしてきた王国のプライドの前に敗れはしたが、まさに夢の終章に相応しい結末となった。

 

 

今後、ラグビー日本代表を取り巻く世界の環境は大きく変わっていくだろう。この文章を記している時点で、それはあちらこちらに見られる。北半球ティア1の六か国対抗に日本を迎えたいとか、南半球ティア1の四か国対抗に日本を迎えたい、あるいは地理的に時差の少ないニュージーランド・オーストラリアとの三か国対抗の可能性など、ちょっと前までの常識では考えられなかった事態が次々と起こっている。

 

ワールドラグビー会長のボーモント氏は「我々が日本の声にも耳を傾けることが重要だと思います。日本は何を望むのか。彼らの望みを聞きその実現に力を貸せないか」と語ってくれた。
日本協会にはプロリーグの創設を目標に、まずは目の前のトップリーグの盛況を実現してほしい。トップリーグには世界中からトップクラスの選手も集まっている。ブームを巻き起こした前回大会の直後のように「チケットを買おうと思ったら一般販売が全く無くて手に入らなかった」挙句「スタンドがガラガラではないか」という失態はもうやらかさないであろうと思いたい。体を張って夢を見せてくれた選手たちに涙させてはならない。「大きな目標は目の前の一歩から」である。

 

余談だが、準決勝イングランド対ニュージーランドの試合開始前の様子は、別の意味で興奮ものだった。ニュージーランドの「ハカ」に対峙するイングランドがV字に並んで受けて立ったのだ。その陣形はまさに「うぉっ?!鶴翼(かくよく)の陣か?」。とくればニュージーランドは魚鱗(ぎょりん)の陣ということか。まさに三方ヶ原(みかたがはら)の戦い、家康(鶴翼)vs信玄(魚鱗)だ。そして会場はというと、小田原北条氏の重要支城・小机城(こづくえじょう)のすぐ隣りとなる横浜国際ときた。
イングランドのエディー・ジョーンズHCは2015年大会のジャパンHC。自身の母方が日本にルーツをもち伴侶は日本人、ジャパンHC以前にはサントリーのHCを務めるなど、日本に対する造詣は深い。今大会でも準々決勝のオーストラリア戦を前にした選手たちに一戦必勝の「サムライ・スピリット」を注入したという。
イングランドの選手が「これはボスの発案なんだ」という趣旨のコメントしていたようだが、エディーHCはオールブラックスのハカ「カパ・オ・パンゴ」の並び方に閃いた何方かによる「こんな並び方で返すのはどうですか」という進言を「それはいい!」と即決したのだろうか。あるいは、御自身がまさかの戦国時代マニアであったのか。いずれにしても、こんなところでも楽しませてもらえるとは思わなかった。

 

 

 

ファンゾーンからクイーンズスクエア、ランドマークプラザを抜けてJR桜木町駅へ。

 

 

 

ホテルの2Fエントランス。

 

 

 

 

 

 

 

パシフィコ横浜・会議センター。

 

 

 

クイーンズスクエアへ。

 

 

 

ラグビーワールドカップ2019のバナー。

 

 

 

 

 

 

 

クイーンズスクエアからランドマークプラザ3Fへ。

 

 

 

ランドマークプラザの、ラグビーボールのバルーン。

 

 

 

3F曲線エスカレーターの手前で左折して、ランドマークタワーのエントランスへ。

 

 

 

エントランス前を過ぎると、右手に「動く歩道」。

 

 

 

動く歩道からの、帆船日本丸。

 

 

 

JR桜木町駅前。トライするラガーマンのモニュメントは強風のため撤去されていた。

 

 

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