2.本郷台(駅西側の道標)から大船(青木神社入口)まで
鎌倉古道・中の道(なかのみち)古道を鎌倉に向けて歩くまち歩き。このページではJR根岸線・本郷台駅(横浜市栄区)の西側に建つ道標から新橋(にいばし。栄区)を経て青木神社(栄区)までを歩く。
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鎌倉街道中の道古道歩き

中世における鎌倉街道のひとつ、鎌倉街道・中の道(なかのみち)古道を下永谷(しもながや。横浜市港南区)から北鎌倉まで、旧跡に立ち寄りながらおよそ11kmを歩く。

 

2.本郷台(駅西側の道標)から大船(青木神社入口)

 

このページではJR根岸線・本郷台駅の西側に建つ道標(追上道標。横浜市栄区)から新橋(にいばし。栄区)を経て青木神社(栄区)までを歩く。

 

1.下永谷から本郷台(駅西側の道標)まではこちら

 

 

横浜市栄区・本郷台ゴルフセンター進入路付近。二又の合流付近に庚申塔・道標が建っている。

 

 

 

「従是(これより)ぐミやうじ道(ぐみょうじみち)」道標。
「栄の歴史」で執筆担当の方々が「追上道標」と称している道標はこの道標のようだ。「追上(おいあげ)」とは「旧鎌倉街道探索の旅 中道編」によると長光寺北側のわずかな上り坂をそう呼ぶ、としている。

 

 

 

二又の左がここまで歩いてきた尾根筋からの鎌倉街道・中の道(なかのみち)古道。右は谷筋を通る古道であり一説には古くからの下の道(しものみち)とも考えられている。中の道は分岐して、下の道はその延びていった先が、弘明寺(ぐみょうじ)に通じている。

 

いずれの道も、この先で交差する「すずかけ通り」を右折して進むと本郷台駅入口交差点に至る。

 

 

 

鎌倉街道中の道古道概念図(戸塚区秋葉三叉路から栄区新橋まで)
拡大版はこちらの画像へ

 

 

 

古道を鎌倉方面へ、根岸線ガード下をくぐっていく。

 

 

 

小菅ケ谷の石仏石塔群と稲荷社の鳥居。

 

 

 

文字が刻まれた庚申塔と、青面金剛(しょうめんこんごう)・三猿が彫られた庚申塔。青面金剛の庚申塔には明和元年(1764)と刻まれている。そして二体の地蔵菩薩と、文字が刻まれた馬頭観世音菩薩。

 

新鮮な生花が活けられており、地域稲荷ともども大切にされているのだろう。

 

 

 

この先、西本郷小学校あたりで道幅が拡がる。

 

 

 

西本郷小学校正門わきの、力石(ちからいし)。

 

 

 

その由来についての詳しい案内板がある。

 

 

 

新橋(にいばし)信号まで来た。

 

 

 

ここは鎌倉街道中の道古道と吉田道(東海道戸塚宿への道)の分岐であり、延命地蔵尊の祠と道標がある。

 

 

 

こちらにも新鮮な生花が活けられている。
「旧鎌倉街道探索の旅 中道編」(初版第五刷・平成12年)によると『この二つの道の分岐点には、延命地蔵堂と道標があったが、地蔵堂はなくなり、道標だけはこの北の西本郷小学校の校門前に移された』とあった。同書の初版第一刷(昭和56年1月)発行後、祠が再建されて道標はしかるべき場所に戻されたことになる。

 

 

 

道標。「従是(これより)ぐミやうじ道」「従是とつ加道」と刻まれている。

 

「とつかみち」は江戸時代に東海道戸塚宿・吉田の大橋から分岐して鎌倉に向かう近世の街道(戸塚側からは「かまくらみち」)として知られているが、その起こりといえば鎌倉時代の「新中の道」となる。

吾妻鏡(鎌倉幕府の史書)には仁治元年(1240)に「泰時(三代執権北条泰時)、山内道路(新中の道)を造るべきよし、その沙汰あり」と記録されている。その経路は鎌倉から巨福呂坂、山内、離山、岩瀬、笠間、新橋(ここまで中の道)と来て、ここから大道、飯島、長沼、倉田と進んでいく。その先、上柏尾で中の道に合流して鶴ケ峰、荏田、二子へ向かうということだろう。

参考
「栄の歴史」
「市民グラフヨコハマNo.97 横浜近世の九街道をゆく」

 

 

 

新橋が架かる「いたち川」(境川水系柏尾川支流)の名は鎌倉を出立した人々にとっての出立(いでたち)が転じて鼬(いたち)になったとする説がある。

 

 

 

新橋から鎌倉に向かう。

 

 

 

笠間交差点(笠間十字路)へ。ここは古びた歩道橋を渡るよりほかない。

 

 

 

県道原宿六浦線(環状4号)をはじめ三本の道路が一点で交差するのではなく三角を作るように交差する(斜め十字路が三つできる)変則的な六差路の笠間交差点は、なかなかカオスな渋滞スポット。バリアフリーを無視したような昭和チックな歩道橋も高齢者にやさしくない。

 

 

 

交差点は令和10年度(2028年度)の完成を目指して線形の改良工事が進められている。

 

 

 

現況図と計画図。画像は横浜市道路局の事業告知。
歩道橋もかなり良くなるようだ。

 

 

 

鎌倉街道中の道古道の道すじに下りて、その先へ。

 

 

 

「今泉村不動江之道」道標と不動明王像。今泉不動の前不動として建てられたのだろう。

 

 

 

今泉山一心院称名寺・今泉不動への不動みち分岐の道標を兼ねる台座は宝永七年(1710)と刻まれているが、不動明王像は彫り直されたもののようだ。

 

 

 

こちらも新鮮な花が活けられ、大切にされている様子がうかがえる。
市街化が著しい現在ではここが不動道の分岐だったことは分かりづらいと思うが、地理院地図(電子国土Web)で参照できる昔の空中写真(1945〜50)を見ると、周辺が谷戸田の水田ばかりだった頃の古道の道すじが今泉不動に至るまではっきりと見てとれる。

 

 

 

続いて笠間庚申塔(かさま こうしんとう)へ。

 

 

 

石仏石塔群と案内板。

 

 

 

由来と石仏石塔群の詳細な解説がある。

 

 

 

邪鬼を踏みつけた青面金剛像は正徳四年(1714)と刻まれている。

 

 

 

こちらの来迎印ポーズの阿弥陀如来像は延宝八年(1680)と、更に古い。庚申塔に阿弥陀如来が彫られているのは庶民に庚申信仰が浸透し始めた初期の頃のものということで青面金剛のそれより見かけることが少なく、ちょっと珍しい。

 

 

 

「笠間総鎮守」青木神社の表参道へ。

 

 

 

青木神社はこんもりとした小山の上に鎮座する。

 

 

 

ドン、とそびえる石段は120段。

 

 

 

心遣いが優しいね。

 

 

 

到着。
青木神社の創建は鎌倉時代から室町時代へと移りゆくころ、建武二年(1335)。室町幕府初代将軍となった足利尊氏の弟である足利直義(あしかが ただよし)配下の近藤清秀が当地の領主となり、一族と領内の鎮護を願って設立した。以来、笠間総鎮守として崇敬を集める。

 

 

 

境内で稲穂を育てていた。

 

 

 

境内社の笠間稲荷社。

 

 

 

石段途中から中の道古道を挟んだ向かいの小山を見る。小山の一部は笠間中央公園。公園を造る前に発掘調査が行われ、弥生時代から奈良時代にかけての竪穴住居跡、鎌倉時代以降の大規模な道路跡などが確認された。
参考「栄区郷土史ハンドブック」

 

 

 

神社参道入口から中の道古道を鎌倉方面へ少し進むと青木神社入口信号。この辺りで横浜市栄区から鎌倉市に入る。
交差点を右折して道なりに進むと大船(おおふな)駅東口バスターミナル、JR大船駅笠間口。

 

 

 

かつて資生堂鎌倉工場が建っていた角の敷地はまず南側にマンションが、ついで令和五年(2023)に「鳩サブレー」の豊島屋(としまや)が新工場(大船工場)を建設した。工場がオープンした2023年の8月10日には「鳩の日」のイベントによる開放があったそうだ。

 

 

 

青木神社の鎮座する小山。

 

 

 

振り返れば鎌倉街道中の道古道は両側のこんもりとした小山に挟まれた間を通されていたことが分かる。「栄区郷土史ハンドブック」によれば笠間(かさま)の地名は『古道かまくら道の両側に小高い丘がありました。その丘を笠に見たてて、その間にある集落なので「笠間」と呼んだという説があります』とある。

こうした小山は鎌倉古道を鎌倉方面に進んだ先、離山(はなれやま)地区にも存在した。しかし時代の趨勢の中、離山の三つの小山は昭和の戦前期までに全て崩されて消滅。笠間の小山も笠間中央公園の側は南側の一部が崩されて造成されている。
そうした中で青木神社が鎮座した小山は崩されることなく、こうして残っている。

 

 

ここで青木神社入口信号に戻って、もう一つの今泉不動の道標を確認しに行く。

 

 

 

信号から青木神社の小山の方へ5,60mほど進むと「今泉山不動明王江之道」と刻まれた道標がこちらにも建つ。こちらは花を添えられることもなく、路傍にひっそりと建っている。

 

昔の空中写真を見ると先の不動道古道と同様、かつては山上に農地が広がっていた小山の裾を取り巻くようにこちらにも古道が通っており、この先で合流して今泉不動に向かっている。道はこちらの道の方がしっかりした道だったように見える。

もしも先の不動道の前不動が昔から像を彫った立派なものだったとしたら、それは江戸方面から東海道戸塚宿、吉田道を経由して今泉不動へ向かう大勢の物見遊山の旅人がそちらの不動道を通っていったからだろう。

 

 

3.大船(青木神社入口)から北鎌倉

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