まちへ、森へ。

箱根湿生花園から金時山、足柄城址へ

平成30年(2018)3月下旬の春休みシーズン、見頃を迎えたミズバショウを観に箱根湿性花園へ。続いて金時山(きんときやま。1212m)に登り、足柄城址(あしがらじょうし)を巡って駿河側(静岡県駿東郡小山町・すんとうぐんおやまちょう)のJR御殿場線・足柄駅へ下山する。

 

1.箱根湿生花園の水芭蕉

 

 

小田原駅東口バス4番のりばから箱根登山バス「桃源台(とうげんだい)」行に乗車。「仙石案内所前(せんごくあんないじょまえ)」で下車して少し戻り、湿性花園への道に入る。標高およそ645m、時刻は朝8時50分過ぎ。

 

 

 

バス停から歩いて10分ほどで町立箱根湿生花園に到着。開園時刻の9時ちょうど。

 

 

 

園内へ。

 

 

 

案内板。
湿性植物園の広さはおよそ3ヘクタール(100m四方×3)。植物園に仙石原湿原復元実験区が隣接する。

 

入口から順に1.落葉広葉樹林(カタクリ)、3.低層湿原(中島往復路。ミズバショウ)、4.ヌマガヤ草原、5.高山のお花畑と岩場植物区(ショウジョウバカマ、イワウチワ)、6.高層湿原(ミズバショウ)、7.仙石原湿原、8.湿生林(ミズバショウ)と巡り、1.に戻る。

 

 

 

外国の山草や園芸種の花壇。

 

 

 

靴底の種子を落とすマットが設置されている。

 

 

 

最初は落葉広葉樹林の植物。

 

 

 

カタクリの群落。下界よりもやや遅れて見頃を迎えた。それでも例年よりは相当早いはず。

 

 

 

 

 

 

 

続いて低層湿原の植物。春シーズンの主役・水芭蕉(ミズバショウ)がちらほらと現れる。

 

 

 

 

 

 

 

木道を進み、順路を左に逸れていくと「中島往復路・水芭蕉の里」。

 

 

 

解説板。

 

ミズバショウは自生地では5月〜7月に開花期を迎える初夏の花。自生地であっても「夏が来れば思い出す」というフレーズから思い浮かべる盛夏の頃よりは、かなり早い。
ここ箱根で栽培されるミズバショウは例年3月下旬〜4月が花の時期で、春の到来を告げる花となっている。しかしながらこの年(2018)は開花が非常に早く、早春の3月上旬から咲き始めて3月下旬にはピークを迎えた。それに合わせてか、湿性花園の冬季休業明けの開園日も3月1日と例年よりかなり前倒しになった。
ちなみにこの年はソメイヨシノの開花も例年よりかなり(一週間から十日ほど)早かった。

 

 

 

ピークを迎えたミズバショウの群落。

 

 

 

湿生花園の公式サイトに掲載された写真を観る限りではピークを過ぎてしまったか、とも思われたが見事に咲き誇っている。園内でも場所によってピークの時期が少しずつずれているようだ。この年は諦めて翌年送りにしようかとも思っていたが、来てみて大正解だった。

 

 

 

奥に見える木道は順路の最後で回ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

順路に戻り、先へと進む。ここは低層湿原の池沼。低層湿原のエリアはパンフレットによれば「川や湖沼の周辺にできる湿原をモデルにしている」とある。もうしばらくすると水草のアサザが見られる。

 

 

 

木道の反対側に広がる湿地の草原。こちらは「ヌマガヤ草原の植物」エリア。花ごよみによると例年であれば6月ごろにニッコウキスゲが見られる。もちろん高層湿原の自生地よりかなり早い。

 

 

 

低層湿原の池沼を回り込むように木道を進んだ先、「高山のお花畑と岩場植物区」にさしかかる手前あたり。この辺りにもミズバショウの群落。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猩々袴(ショウジョウバカマ)。山地・亜高山の湿地に咲く。
箱根や丹沢では確認されていないが、似た種のシロバナショウジョウバカマは確認されている。

 

 

 

岩団扇(イワウチワ)。山地・亜高山の岩場に咲く。
こちらも箱根や丹沢では確認されておらず、関東では奥多摩以北に分布するようだ。近いようでいて、植生は微妙に異なっている。箱根や丹沢でこの種の仲間といえば、紅花姫岩鑑(アカバナヒメイワカガミ)が思い浮かぶ。

 

 

 

「高層湿原の植物」エリア。パンフレットによると「尾瀬やサロベツ原野など、高山や寒冷地に発達するミズゴケ湿原をモデルにしている」とある。

 

この辺りで順路はほぼ中間点。

 

 

 

高層湿原エリアの木道。この辺りにもミズバショウ。

 

 

 

この辺りはピークを過ぎてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

水中に見られる、神代杉(ジンダイスギ)の根株。地表から50pほどの深さに埋没していたもので、展示のためにまわりの土を取り除き水の中で保存している。
ほかにも園内で池を掘削した際に何株もの神代杉が発見され、年代の古いものが展示室に保存されている。

 

 

 

案内板。

 

神代杉は巨大地震の度に土砂に埋没した杉が、栄養に乏しく微生物のいない土中で腐食せずにそのまま化石となった。埋没したのは年代測定により3,000年前〜850年前の間で、様々な年代のものが確認されている。

 

仙石原(せんごくはら)の神代杉はその場に生えていたものが埋没したというよりは山から土砂とともに滑り落ちて来て埋まったものが多い、と考えられている。その独特の色合いは江戸時代から寄木細工の材料として利用されてきた。

 

 

 

「仙石原湿原の植物」エリア。
このエリアは元々から仙石原に生育する湿原植物が集められている。

 

 

 

隣りに広がるのは「仙石原湿原植生復元区」。

 

 

 

 

 

 

 

解説板。
仙石原湿原は神奈川県では唯一の湿原。元々は湖だったところが次第に乾燥して湿原となった。

 

昭和初期頃までは村の共有地として草刈りや野焼きが行われていたため湿原植物の群落が良好に保たれていた。しかし草地の利用がなされなくなった戦後以降、まずはススキやヨシ、その後は灌木が増えていく。こうした自然界の遷移により湿生植物は生存競争に敗れ湿原は乾燥化、そのまま放置すればやがて森林へと姿を変えていく。

 

植物の生育には厳しい環境である高山や寒冷地の湿原と異なり、比較的低山の湿原(標高およそ650m)である仙石原はある程度人の手が入らなければその姿を保ち続けることはできない。

 

 

 

春には野焼きが行われる湿原。

 

 

 

 

 

 

 

「仙石原湿原の植物」エリア。

 

 

 

「湿生林の植物」エリアへ。水辺に生えるハンノキが林をつくっている。

 

 

 

再びミズバショウの大群落。

 

 

 

奥には始めに回った「中島往復路・水芭蕉の里」の木道。

 

 

 

見頃を迎えたミズバショウ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタクリの群落に戻ってきた。

 

 

 

ラストは山野草や園芸品種の花壇。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前10時20分ごろ、湿性花園を後にして正面にそびえる金時山(1212m)へ向かう。気温は20度、3月末とは思えない初夏の暖かさ。

 

来る時に利用した「仙石案内所前」バス停まで戻り、さらに進んだ先の仙石原交差点を左折して「金時登山口」バス停へ向かう。

 

 

2.仙石原・矢倉沢峠登山口から金時山へ

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