まちへ、森へ。

仙石原すすき草原と箱根湿生花園

仙石原すすき草原

 

令和五年(2023)の10月も下旬に差し掛かった頃、箱根の仙石原(せんごくはら)すすき草原を歩く。この年は例年よりも見頃を迎えるのが一週間くらい早い、とのことだった。

 

今回は午前中の早い時間帯に加えて夕方ごろにもすすき草原を訪れる予定。その合間に箱根湿生花園を巡ることにする。

 

 

仙石原すすき草原の遊歩道の最寄りとなるバス停は仙石高原(箱根登山バス・小田原駅東口〜桃源台)。
今回は一つ隣(小田原方面寄り)の台ヶ岳バス停で下車し、すすき草原と湿原を通り抜ける県道から歩く。

 

 

 

時刻は朝9時過ぎ。台ヶ岳バス停そば、ファミリーマート前の横断歩道から湿原側の歩道へ。

 

 

 

左手には台ヶ岳(だいがたけ。中央火口丘。1045m)山麓のすすき草原、右手には湿原が広がる。

 

 

 

朝日を浴びて銀色に輝く、見頃を迎えたすすき草原。

 

 

 

湿原の側も一部は乾燥化しており、すすき草原が広がっている。アンテナの建つ山は箱根外輪山の丸岳(まるだけ。1156m)。

 

 

 

形のいい山容が外輪山でひときわ目立つ、金時山(きんときやま。1212m)。

 

 

 

風にそよぐ穂、うねる草原。

 

 

 

箱根ジオパーク・仙石原湿原エリアの案内板。

 

仙石原は4万年前は巨大な湖だった。神山(かみやま。中央火口丘、箱根最高峰。1438m)からの噴出物が小塚山付近で早川を堰き止め、仙石原湖を形成した、とある。箱根ジオパーク公式サイト・仙石原湿原のページの解説によると約2.2万年前の神山の噴火により湖が2つに分断。仙石原の側は陸地化し、その一部が現在の湿原となった。

 

現在の芦ノ湖が出現したのはおよそ3千年前。神山の大噴火に伴う山体崩壊により早川が堰き止められて誕生した。

 

 

 

湿原に建つ記念碑。

 

標高およそ650mに広がる仙石原湿原は広さおよそ17ヘクタール(100m四方×17)。日本の低山地に残る数少ない湿原として学術的に貴重であり、昭和九年(1934)にその一部(およそ0.7ヘクタール。100m×70m相当)が「箱根仙石原湿原植物群落」として国の天然記念物に指定された。

 

 

 

湿原はシカによる湿生植物の食害を防ぐため2.3kmにも及ぶ植生保護柵で囲われている。

 

 

 

すすき草原の入口に立つ案内板の一部。

 

仙石原湿原とすすき草原は国立公園の特別保護地区に指定されており、仙石原湿原の側は立ち入りが禁止されている。ただ湿原の一部が箱根湿生花園の仙石原湿原植生復元区として開放されており、木道が廻らされている。

 

 

 

箱根湿生花園の仙石原湿原植生復元区に設けられている案内板の一部。

 

湿原の左下の一角が天然記念物に指定されているエリア。右中ほどが湿生花園の植生復元区のエリア。

 

湿生花園の復元区は後ほど観に行く。

 

 

 

陽光に輝くススキ草原は思っていた以上に美しい。朝早くにここまで来た甲斐があった。

 

 

 

すすき草原を一直線に延びる遊歩道。

 

 

 

交差点に到着。

 

 

 

交差点名はそのものずばり「高原」。角にはローソンがある。

 

 

 

すすき草原に多くの観光客が訪れるハイシーズンには仙石高原バス停に隣接する広場に臨時トイレが設置されている。

 

 

 

遊歩道へ。

 

 

 

 

 

 

 

心地よい秋風が吹き抜け、ざわざわと波打つ銀の穂。

 

 

 

 

 

 

 

この美しいススキ草原は、定期的な山焼きによって維持されている。

 

ススキ草原が萱場(かやば。茅場)として利用されていた時代は雑草・雑木の繁殖を防ぐために火を入れて維持管理されていたが、1970年代以降は山焼きが途絶えていたという。生活様式の変化によりカヤが不要になったというのがその理由であろう。その後およそ20年、ススキ草原は低木の繁殖した藪になっていたはず。
ススキ草原の景観を維持するという新たな目的で山焼きが復活したのは平成元年(1989)になってから。

 

 

 

 

 

 

 

山焼きは新型コロナ禍の影響で人の流れが途絶えた令和二年(2020)3月から実施されていなかった。その後に雑草、雑木がはびこっていたであろうが、令和四年(2022)3月、コロナ禍前の平成31年(2019)3月以来となる山焼きが3年ぶりに復活。3年分の雑草、雑木が焼き払われた。その様子は環境省関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャー日記(関東地区)に詳しく記されている。令和五年(2023)3月にも山焼きは実施された。

 

こうして例年3月に行われる山焼きが復活し、令和五年(2023)5月には新型コロナが5類感染症に移行したことにより人出も本格的に回復。美しいススキ草原の景観は多くの観光客を前にして、甦った。

 

 

 

金時山を背景に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前10時半過ぎ、すすき草原から湿生花園へと向かう。

 

 

 

こちらは夕方のすすき草原。午後3時過ぎに湿生花園から戻ってきた。

 

 

 

夕日に照らされる黄金色のすすき草原を期待していたのだが、あいにくの空模様。
天気が下り坂だったのに加えて日中の気温が季節はずれの高温だったので、大気が不安定になって大量の雲が湧いてしまった。

 

 

 

黒い雲が垂れ込める。

 

 

 

それでも時おり雲の切れ間から日が差し込んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

午後4時まえ。これ以上待っても無駄のような気がしてきたので此度はこれまで、とする。

 

 

箱根湿生花園へ

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