まちへ、森へ。

ペーパークラフトコレクション

まちで見かけたアレを、ペーパークラフトで

 

まち歩きで見てきた様々な建造物、あるいはその地に所縁のある建造物などをペーパークラフトで形にしてみました。

 

まず初めにスタジアムシリーズとして横浜スタジアム、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)、ニッパツ三ツ沢球技場。
続いて艦船シリーズとして護衛艦かが、日本郵船氷川丸、練習帆船日本丸(二代目)といきます。

スタジアムシリーズ

2020年(令和二)のプロ野球シーズン。横浜DeNAベイスターズのホーム・横浜スタジアムは最終工期のレフト側ウィング席がいよいよ完成し、新たなスタートを切る一年となるはずだった。

 

レギュラーシーズンの開幕に先立ち新装スタジアムのこけら落としとなるはずだった、3月7日のオープン戦(対福岡ソフトバンク戦)。記念品として入場者に「観戦証明書」と「横浜スタジアムペーパークラフト」が配布されると聞くに及び「何としても、絶対に手に入れる」と意気込んで確保できたチケット。しかしながら、全世界を襲った新型コロナウィルス禍のあおりを受けて、記念試合はまさかの中止となってしまった。記念品はレギュラーシーズン開幕戦(対阪神戦)で配られることになり、そのショックたるや…。
ところがコロナ禍の猛威はとどまるところを知らず、収束の気配がない。世の中のあらゆるイベントが中止に追い込まれていく中でプロ野球公式戦の開幕も延期。配布の機会が失われたペーパークラフトは球団の厚意によりPDFファイルのデータとして公式ウェブサイトから期間限定(3月末まで)で無償配布されることとなった。

 

そこで球団の厚意への感謝を込めて、スタジアム増築オープンを祝しペーパークラフトスタジアムを完成させてみました。

 

 

こうなると、いろいろと作ってみたくなる性分。近所の散歩はともかくとして電車・バスを乗り継いであちこち出歩くことのままならぬご時世なので、横浜スタジアムを皮切りにこれまでの「まち歩き」で見かけたあれこれを順次ペーパークラフトで製作していくことにします。

 

 

 

こちらはJR関内駅南口・地下鉄関内駅の側(旧市庁舎側)から見るスタジアム。外野側に「Yデッキ」(外周一周デッキ)が増築された。

 

 

このペーパークラフトはデータを紙に印刷してパーツをカットし、切れ込みに差し込んで組み立てていくタイプ。
製作に用いた紙は、100均のセリアにて購入したA4マット紙(厚み0.12o。20枚入り)。マット紙としては薄手だが、小さめのペーパークラフト作品に用いるには充分なコシがある。
なお厚手のA4マット紙(0.2o前後。官製はがきくらいの厚み)は100均では取り扱っていない模様。そちらは通販かホームセンター、家電量販店で。

 

ピンセットはデータファイルをマット紙に印刷しての作品作りには必須。組み立て式ペーパークラフトの切れ込みへの差し込み、糊付け式ペーパークラフトののりしろ、いずれにしても指先だけで何とかしようとするとたぶんグチャグチャになります。
挟んで切れ込みに差し込むには、クラフト用の先端が細くて平らなピンセットがベスト。

 

なお糊付け式のペーパークラフトの場合、のりしろの貼り付けは細かい作業になるので、のりは液状のものよりは粘りのあるスティックのりの方がよい。

 

 

 

JR根岸線、首都高横羽線沿いの三塁側。

 

 

 

バックネット裏方向からのスタジアム。前年度に増築された個室閲覧席のスタンド。

 

 

 

中華街北門(玄武門)側となる一塁側。こちらのウィング席も一年前に先行オープンした。

 

 

 

日本大通り(にほんおおどおり)側から見るスタジアム。

 

 

 

センター方向からのスタジアム。

 

 

 

続いて、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)。こちらのデータは日産スタジアム公式サイトで常時公開されている。

 

2020年(令和二)のJリーグは横浜FCが念願のJ1昇格を実現。数年前には「次に落ちるオリジナル10はマリノスだな」などと揶揄され気を揉んでいたマリノスも劇的に復活、前シーズンに久しぶりにJ1を制覇した。
というわけで、ちょっと前までは「J2で実現したらシャレにならん」と思っていた「横浜ダービー」が十数年ぶりにJ1で実現。「絶対にチケットを取るぞ」と楽しみにしていたのだが、こちらも当分の間お預けになってしまった。

 

 

 

2600分の一の、小ぶりなモデル。こちらも切れ込みへ差し込む、組み立て式。

 

シンプルな構造ではあるが、やはりクラフト用ピンセットがあったほうが作りやすい。

 

 

 

お次はニッパツ三ツ沢球技場。ニッパツ三ツ沢球技場の公式サイトでデータが常時公開されている。こちらのモデルはのりしろに貼り付けていく方式。

 

メインスタンド(正面入口)側からのスタジアム。

 

 

 

東側のゴール裏スタンド側から。メインスタンド下の入口からゴール裏スタンドへつながる渡り廊下もきちんと再現されている。

 

 

 

バックスタンド側から。スタンドの角の曲線部分は、かなり適当に処理。

 

 

 

西側のゴール裏スタンド側から。スタンドのギザギザと渡り廊下は組み立てていてグチャグチャになりかけたが、うまい具合にピントがぼけてくれた(笑)。

 

 

艦船シリーズ

「スタジアムシリーズ」に続いては「艦船シリーズ第一弾」として、海上自衛隊横須賀基地を母港とするヘリコプター搭載護衛艦(DDH。ヘリ空母)「いずも」。令和元年(2019)の海上自衛隊フリートウィークでは横浜港・大さん橋に接岸していました
それでは「いずも」をどうぞ、と行きたかったところでしたが、ウェブ上に「いずも」の適当なペーパークラフトがない。
そこで「いずも」型の2番艦「かが」を作ってみました。

 

「かが」は呉基地を母港とし、「いずも」「かが」ともに横浜磯子(いそご)のジャパンマリンユナイテッド(旧IHIマリンユナイテッド、石川島播磨重工業)で建造された船。

 

 

 

海上自衛隊大湊地方隊のサイトでペーパークラフトのデータが配布されていた「かが」のペーパークラフト。
こちらは厚さ0.2o程度のマット紙に印刷して作ってみました。

 

※令和二年(2020)8月現在、「かが」のペーパークラフトは簡易版に置き換わっています。チャレンジする人が少なかったのだろうか?
※2021年9月現在、防衛省・自衛隊香川地方協力本部のペーパークラフトのページでデータが提供されていることを確認しました。

 

 

 

輸送ヘリ、哨戒ヘリ、牽引車も載せてみた。甲板上のヘリの発着場は五か所。

 

 

 

ちょっとひしゃげてしまった、艦首のレーダードーム。甲板は浮いてしまった。船体を歪みなく組み立てるのは、結構難しい。

 

 

 

艦橋。

 

 

 

 

 

 

 

細かいところを頑張って作ってみたのだが、艦橋が斜塔のように傾きかけており危うい(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

右舷側に張り出したエレベーター。

 

今後、「いずも」「かが」ともにF-35B(戦闘機)の運用が可能となるように改造される。

 

 

 

旧海軍の航空母艦「加賀」の名を受け継ぐDDH「かが」。

 

 

 

 

さて、久しぶりのペーパークラフト更新は「艦船シリーズ第二弾」です。今回は横浜港・山下公園に停泊する昭和期の貨客船「日本郵船氷川丸」。
新型コロナウィルス感染増加による3回目の緊急事態宣言の発令に加えて連日の猛暑に見舞われた、令和三年(2021)の8月。コロナ禍以前にそもそも暑くて一日中歩き回るのがしんどい、ということで歩き回るのをやめて手間のかかりそうな大物へのチャレンジ。

 

氷川丸は昭和5年(1930)に横浜船渠(よこはませんきょ。のちの三菱重工横浜造船所)で建造され、昭和35年(1960)に引退した豪華客船。その内装はマルク・シモン(フランス)のデザインによるアールデコ様式

 

 

 

 

データは「キヤノン クリエイティブパーク」でダウンロードできます。今回も厚さ0.2o程のマット紙に印刷しました。

 

余談ではありますがキャノンといえばラグビートップリーグ「キヤノンイーグルス」が来シーズンのプロリーグ(リーグワン)発足に合わせてホストエリアを横浜市とし、チーム名も新たに「横浜キヤノンイーグルス」としてスタート。ホストスタジアムは上記のニッパツ三ツ沢、日産スタジアムとなります。ようこそ横浜へ。
ちなみにニッパツ三ツ沢のバックスタンド・ゴールライン際でラグビーを観戦するとこんな感じに見える

 

 

 

今回は製作に用いた小道具を紹介。
マストやスクリューの円錐など、丸める部材は太い丸棒から細い丸棒までを用いて段階的に丸めていきました。一番太いのは百均の編み棒。太さは適当に選びましたが、これはNo.7(7号)です。次のものは片側を切り落とした綿棒。一番細いのは眼鏡用プラスドライバー。この他には竹串、爪楊枝などでも構わないでしょう。
続いては眼鏡用マイナスドライバー。これは先端がヘラ状なので木工用ボンドを薄く狭く塗るのに便利であるし、付着したボンドを少しばかり放置しておいても拭い取りやすいので、爪楊枝よりも使い勝手がいい。今回は船体の骨組みの張り合わせにスティックのりを使った以外は全て木工用ボンドを利用しました。実際、細く丸めた部品を甲板に立てて接着していくのはスティックのりではたぶん無理だと思います。
そしてピンセット。これは切手用ピンセットの流用です。先が細くて滑らかで、細かい部品の張り合わせに重宝します。

 

 

 

船体の骨組み。
組立説明書の4番まで、骨組みの張り合わせはスティックのりを利用。
5番以降、骨組みとなる仕切り板のギザギザののりしろと船体の側面・底面を張り付けていく作業から先の手順は、全て木工用ボンドを利用しました。

 

 

 

 

船尾。この辺りで船体に若干のゆがみが出てしまった。序盤のヤマ場といえましょう。

 

 

 

完成した船首部分。組立説明書の14番以降は細かい部品と甲板、船体を手順通りに、部品を一つずつ切り出しては組み立ててひたすら貼り付けていく作業。

 

 

 

船室部分。救命ボートが備えられているデッキ(7階。ボートデッキ)の船室(煙突の立っているところ)は乗組員の占有スペース。救命ボートの下、側面の裏側となって外からは見えない一等客室(6階。ブリッジデッキ、Aデッキ)の屋外デッキのパーツもきちんと印刷されている。

 

 

 

反対側の右舷の側面を一か所だけ、穴をあけてみた。茶色く塗られた屋外デッキが見える。一か所にとどめたのは、ここを全部開けてしまうと強度が心もとないので。

 

 

 

屋外デッキの奥、一等客室の壁も印刷されている。芸が細かい。

 

 

 

船首寄りの船橋(ブリッジ)。

 

 

 

最上階は操舵室。その下は船長室、その下は一等航海士らの居住区。

 

 

 

船尾部分。このペーパークラフトは現役当時の貨物倉ハッチ(開口部)が再現されている。現在の氷川丸は船尾の甲板は改修されて広々とした緑色のオープンデッキになっており、以前はそこでビアガーデンを営業していた。オープンデッキの下は現在エントランスホールになっている。

 

 

 

 

 

 

船尾に書かれた「氷川丸 横浜 HIKAWA MARU YOKOHAMA」の文字とスクリュー。船体に歪みが出てしまったので、船尾から左舷側ののりしろがはみ出てしまった。

 

 

 

上から見た氷川丸。貨物や食料、船客手荷物・郵便物などを収容する倉の四角いハッチは船首側に二か所、船室の前後に二か所、船尾側に二か所の計六か所。ハッチカバーを開けて倉の荷物を吊り上げるデリック(荷役装置。デリックポストなどに取り付けられて旋回上下するデリックブームのフックに荷物を吊り下げる仕組みのクレーン)も九か所に装備されている(6ハッチ9ギャング)。

 

シアトル航路に就航した氷川丸級貨客船は、同時期にサンフランシスコ航路に就航した浅間丸級貨客船よりも小型であるにもかかわらず、貨物荷役設備は浅間丸級を凌ぎ貨物船並みに充実していた。これは当時のシアトルが小さな町であったことから旅客よりも貨物の需要の方が大きかったことによる。シアトルからは大陸横断鉄道のグレート・ノーザン鉄道が敷かれておりアメリカ北部の大都市シカゴへは最短距離で結ばれた。ちなみに日本郵船のファンネルマーク(煙突の塗装)に「二引きのマーク(赤い二本ライン)」が採用されたのはこの頃から。

 

戦後の昭和25年(1950)には郵船の発注による「Aクラス貨物船」の建造が再開され、横浜造船所では赤城丸級五隻を建造。昭和30年代に入ると「新Sクラス貨物船」の建造が始まる。横浜では相模丸級七隻が建造された。この相模丸級貨物船はジブリ映画「コクリコ坂から」で航洋丸として描かれている(ただし航洋丸は長崎で建造された同クラスの讃岐丸級。外観上はほとんど同じだが相模丸級とは船室の屋外デッキの開口部のデザインが若干異なる)。

 

参考「横浜市指定文化財氷川丸 調査報告書」横浜市教育委員会 「20話でつづる名船の生涯」三菱重工業株式会社横浜製作所 「氷川丸とその時代」郵船OB氷川丸研究会

 

 

 

最後は台座に乗せて。

 

 

 

 

出歩くのがしんどくなる猛暑の季節、恒例となりつつあるペーパークラフト更新。コロナ禍の外出制限から始まったこの企画、もはや外出制限とは関係なく冷房の効いた部屋でラクをしたいがために継続中。三度目の夏を迎えた今回(令和四・2022)は艦船シリーズ第三弾となります。
今回の船は「練習帆船日本丸」。前回の氷川丸と同様、「キヤノン クリエイティブパーク」からのダウンロードです。なお、この日本丸は「みなとみらい」石造ドックに係留されている初代ではなく、横須賀の住友重機浦賀工場(浦賀ドック)で昭和59年(1984)に竣工した二代目(現役の日本丸)となります。

 

 

こちらは完成直前、帆を張る前の姿。
船体などは厚さ0.2o程度のマット紙に印刷しています。

 

 

 

甲板上の構造物は氷川丸と比べるとシンプルなので組み立ては楽ですが、マストに横木(ヤード、帆桁)や帆を貼り付けるのにそれなりの手間がかかります。

 

 

 

帆を張って、完成。
帆は0.1o程度のマット紙に印刷しました。

 

 

 

船首。青い一本ラインは二代目のトレードマーク。

 

 

 

 

 

 

 

船尾。

 

 

 

この船、船体の船尾部分の組み立てが一番難しかった。ボンドを付けながら歪みなく組み立てるのは結構難しく、のりしろがはみ出てしまいました。

 

 

 

このモデル、組み立て始める前に完成した船を飾る場所に合わせて「舳先(へさき)右向き」か「舳先左向き」かを決めるようになっています。帆が風を受けて膨らむ様子を表現するため、どちら向きにするかで使用するパーツが異なります。
今回選択したのは「舳先左向き」。

 

 

 

右舷(うげん)を見せるとこんな風になってしまいます。

 

 

 

舳先左向きに飾る、日本丸。

 

 

 

なかなかカッコイイ姿ですね。

 

 

 

左舷でも船尾側から見ると、こうなってしまう。

 

 

 

上から。

 

 

 

艦船シリーズ、来年は更なる大物にいくつもりではありますが予定は未定、とさせてもらいましょう。ではでは、皆様もご自愛くださいませ。

 

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