平成29年(2017)の大型連休前半。表丹沢(おもて たんざわ)の南麓・秦野(はだの)盆地の南側に隆起する渋沢(しぶさわ)丘陵をめぐり歩き、秦野盆地湧水群や震生湖(しんせいこ)、頭高山(ずっこうやま)などを訪れる。
1.湧水群から白笹稲荷、震生湖へ
表丹沢の山麓、秦野盆地を囲む渋沢丘陵を歩く。秦野駅南口から歩き始め、今泉遊水池(太岳院池)、まいまいの泉、白笹稲荷へ。続いて眺望の良い渋沢丘陵の尾根道に上がる。尾根から震生湖へ下り、再び尾根に上がって頭高山方面へ。
朝9時半ごろ、小田急線・秦野(はだの)駅。
このコンコースを始め駅内には森の木々をイメージしたようなデザインが随所に見られる。
秦野駅南口の駅前。
北口が表丹沢の登山口となる蓑毛(みのげ)・ヤビツ峠へのバスが発着し登山者にとって馴染み深いのに対し、南口は長閑(のどか)な渋沢丘陵へ向かうハイカーに親しまれている。
「名水の里」秦野らしく、駅前の通りに整備されている「秦野駅南口せせらぎ」。荒井湧水を水源とする荒井用水から水を引いている。
今回の湧水めぐりは小田急線の南、渋沢丘陵の側に湧く数か所の湧水を巡っていく。
秦野盆地湧水群はどちらかといえば小田急線の北側、丹沢山麓に湧くそれのほうが知名度が高い。
湧水群のシンボルといえば秦野駅北口近くの「弘法の清水」。そして表丹沢山麓の葛葉川上流「葛葉の泉」、水無川上流「竜神の泉」。
さらに、蓑毛(みのげ)バス停からヤビツ峠へ向かう山中の「春嶽(はるたけ)湧水」はヤビツ峠経由の大山登山者に、ヤビツ峠奥の「護摩屋敷の水」は表尾根に向かう登山者が寄り道してでも汲んでいきたい湧水として親しまれている。
突き当りを横断歩道で渡るとすぐの右手に、今泉名水桜公園への道案内。
曹洞宗太岳院(たいがくいん)の敷地に沿って、右へ。
太岳院の六地蔵。
公園の入口。
今泉名水桜公園の案内図。
「今泉湧水池」は古くから「太岳院池」と呼びならわされてきた。その水量は多く、一日あたり2,500tもの湧水量を誇る。
奥へと進む。
湧水がつくる大きな池。
青葉の茂り始めた中、富士山がかすかに頭をのぞかせる。
せせらぎ。
晩春のこの時期に咲く桜はヤエザクラ。案内板によると公園には18種の桜が植えられているとのこと。
公園を後にし、震生湖(しんせいこ)方面へと進む。
道すがら、富士山が大きく見える。
突き当りのバス通り。正面には今泉神社。
左折して進む。
南公民館前。奥には南小学校。
南公民館の「まいまいの泉」。地下水の観測井戸を利用して整備された、とある。
このように秦野の街はまちなかの至るところに水を汲める湧水が整備されている。
この湧水は自噴しており、ポンプは使われていない。
南公民館を後にして白笹稲荷へと向かう。南小学校へと進み、突き当りを右折。
進んでいった先に、白笹稲荷神社への道案内が出ている。
しばらく進むと、赤い鳥居が奥に見えてきた。
白笹稲荷神社(しらささいなりじんじゃ)の大鳥居。
広い参道。
参道の右手には四月中旬ごろに淡い黄緑色の花を付けるサクラ「鬱金(ウコン)」「御衣黄(ギョイコウ)」が植えられている。
訪れた時は既にお終いだった。
白笹稲荷神社。
手水(ちょうず)。「白笹稲荷の湧水」を竹の樋に引水している。
拝殿。
秦野の蔵元「金井酒造店(かねいしゅぞうてん)」の「白笹(しらささ)」菰樽(こもだる)が奉納されている。
白笹稲荷は関東三大稲荷の一つに数えられる。その創建年代は不詳であるが、社伝によればその創始は大和朝廷の時代にまで遡るとされる。秦野は大和時代の豪族秦氏ゆかりの地。ちなみに稲荷信仰を広めたのが秦氏である、とされている。主祭神として穀物霊を祀り、人々の衣食住をつかさどる神様として信仰されてきた。
参考・かながわの神社。
本殿の裏手、奉納された赤い鳥居。
それまでの西末社を合祀した、権兵衛稲荷。
鹿の子(かのこ)模様の木肌を見せる、鹿子の木。
大鳥居の向こうに相州の霊峰・大山(おおやま。1252m)を望む。浮世絵にでも描かれそうな、絵になる構図。
白笹稲荷を後にして、渋沢丘陵へ。
白笹稲荷入口信号。
横断歩道を渡り、奥へと続く坂道を登っていく。
震生湖への道案内。その向こうに表丹沢の稜線。
ゆるゆると登っていく。
振り返れば、大山から右へ延びる大山南尾根。
大山から高度を落とし、岳ノ台。再び高度を上げて二ノ塔・三ノ塔、そして表丹沢の盟主・塔ノ岳(とうのだけ。1491m)へと続いていく表尾根(おもておね)。塔ノ岳からは手前・左方向に丹沢登山のメインルートとなる大倉尾根が下っていく。
塔ノ岳から左は鍋割山稜(なべわり さんりょう)。高度を落として檜岳(ひのきだっか)山稜。高度を落とした鞍部(あんぶ)の辺りにぴょこっと小さく飛び出しているのは玄倉川(くろくらがわ。ユーシン渓谷)源流域の丹沢深部・同角ノ頭(どうかくのあたま。1491m)。
空に向かって延びてゆく道。
丘を越えてゆく。
大山から表尾根、鍋割山稜にかけてを一望。そして麓の盆地に広がる秦野の街。ガイドブックなどでお馴染みの、表丹沢を代表する雄大な景観。
表丹沢の大パノラマ。 拡大版
丘陵の尾根に上がると、富士山が大きくみえる。
そして、箱根の山々。右から外輪山の明神ヶ岳、箱根最高峰の神山(かみやま。1438m)、駒ケ岳、そして二子山。
ぐるりと眺望が開ける、爽快なハイキングコースをゆく。
春の農作業の季節を迎えた渋沢丘陵。
尾根道から震生湖へと下りていく。
ソーラーパネルが広がっている。
駐車場の向こうが震生湖。
震生湖(しんせいこ)は関東大震災(大正12・1923)の土砂崩落によって沢が堰き止められたことで誕生した、せき止め湖。自然湖としてはかなり新しい。
その面積は1.3ヘクタール(100m四方×1.3)、周囲は1q。大きさとしては鎌倉の散在ケ池(さんざがいけ。鎌倉湖)といい勝負。
新緑が湖面に映える。その姿は、湖というよりは谷戸の奥にひっそりとたたずむ大きな池といった風情。
対岸に渡る橋の向こうには釣り人のための桟橋が造られている。
湖畔にも釣り人がちらほら見える。
湖畔を散策。
清々しい、静かな湖畔。
新緑の森の中、湖畔から尾根へ戻る。
この森は「秦野雑木林を守る会」により手入れがなされているとのこと。
尾根に戻る。
ここからは渋沢丘陵の尾根歩きを経て頭高山(ずっこうやま)へと向かう。
尾根伝いの車道をまっすぐ進んでいく。
震生湖バス停。
車道からの分かれ道。
道標に従って狭い道へ。
一番上の道標はちょっと分かりにくい。この先栃窪会館で明らかになるが、上の段が示すのは渋沢丘陵から栃窪会館あたりでいったん渋沢駅方面へ下りて頭高山入口へ登り返す大回りなルート。
渋沢駅までの距離にしても、ここから渋沢駅に向かうのに中段に3.7qとあるのに「渋沢駅(頭高山入口経由)7.5q」のルートの方を歩く人はまずいないだろう。
栃窪会館の先、頭高山へは近道となる尾根伝いのルートがある。そちらを行っても結局は頭高山入口に下りてから頭高山に登っていくことになるのだが、その場合頭高山入口までの距離は上段の距離よりもっと短い(およそ3.7q)。
農道を進む。
眼下に見えるのは東名・中井PAあたり。
里山の森を抜けていく。
向山配水場。
未舗装の農道をゆく。
富士山に再会。
右手の塔ノ岳(1491m)から鍋割山稜。高度を落として檜岳(ひのきだっか)山稜へと続く鞍部の向こうに小さく飛び出した三角は同角ノ頭(どうかくのあたま。1491m)。塔ノ岳と同じ1491mだから、かなり奥が見えていることになる。
画像を拡大すると、同角ノ頭の右手には手前の栗ノ木洞(くりのきどう)の向こうに重なるように西丹沢の雄峰・檜洞丸(ひのきぼらまる。1601m)が見えている。これはちょっと意外だった。
再び舗装路。道標には相変わらず「渋沢駅」へ2つのルートが示されている。
栃窪会館のあたり。頭高山(ずっこうやま)へと向かう。
会館前の道標。下段の「頭高山近道」の方向へ。こちらを行くとここから頭高山入口まではおよそ1.8q。
先ほどから頻繁に見る「頭高山入口」の方向は渋沢駅方面へ下りていって登り返すという大回りなルート。道標が指し示す方角からして、渋沢駅を出発してこれからから頭高山へ向かう人のためでもなさそうなこの道標は、どのようなルートで歩く人を想定しているのだろうか。
正面の狭い道へと進む。
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