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須雲川自然探勝歩道から箱根旧街道を経て函南原生林へ


3.芦ノ湖畔・箱根町から函南原生林へ

2.畑宿一里塚から箱根旧街道を芦ノ湖畔・箱根町へはこちら。




伊豆箱根バス「箱根町」バス停。熱海(あたみ)駅行のバスが出ている。

旧街道をたどり元箱根に正午ごろ到着して一時間、いまだに霧は晴れてこない。とはいえ、雨がザッと降ってくるでもない。というわけで予定通り函南(かんなみ)原生林を目指すことにする。

午後1時5分、バスに乗車。濃い霧の中、バスは箱根峠、湯河原峠を越えて、山中をひた走る。




函南原生林入口に到着、午後1時20分。

熱海行の最終バスは午後4時25分、箱根町・箱根関所跡方面の終バスはもっと早い。これを逃すと帰れなくなるが、ゆっくりと原生林を巡っても十分な時間がある。




十数メートル先も全く見えない。箱根峠越えのこの道は車の往来が激しいので、クルマのライトと音に十分注意して道を渡る。




函南原生林・学習の道入口の案内板。 案内板拡大版

函南とは、「はこね(函嶺。かんれい)の南」。ここは箱根山(はこねやま)外輪山の南、静岡県側に広がる広大な原生林。箱根山禁伐林組合が管理するこの森は広さ223ヘクタール(100m四方×223)。標高500m〜850mの山腹に広がっている。

原生林は禁伐の森。江戸の昔から、麓の集落の水源涵養林(すいげんかんようりん)としてありのままの姿で保護されてきた。ここは、林業のための植林地は言うに及ばず、人々が薪や炭などを得るためにクヌギやコナラなどの若木を育てては伐採し下草を刈って手入れを繰り返してきた里山とも、基本的に性格が全く異なる。




植物の観察・学習の目的などで訪れる人々のために、厚意で「学習の道」という散策路(登山道)が設けられている。観光的な利用では一切入山禁止。




霧に煙る、原生林へ。幻想的な山歩きの始まり。




原生林という響きには、どこか憧憬を抱いてしまう。




早速、苔むす大木がお出迎え。




気温は真夏だというのに23度、霧のおかげでひんやりとして気持ちがいい。




ひたすら道を下っていくと、道標が設けられた分岐が現れる。




ここからぐるりと森を一周すると2時間ほどとされている。3時間もあれば、ゆっくりと森歩きが楽しめる。




びっしりとコケをまとった、ケヤキの大木。ケヤキにこれだけ苔が付くのだから年間を通じて霧も多く、湿潤なのだろう。




こちらはブナの大木。その瑞々しき佇まいは、日本の森の象徴。

ブナの木はスギやヒノキといった針葉樹に比べると、その根を張った土壌が抜群の保水力を持つ。ブナ林が膨大な水を蓄える「緑のダム」といわれる所以である。

箱根や丹沢といった南関東・東海の山々では、標高800mあたりからブナ林があらわれる。ブナはもともと冷涼・湿潤な気候を好むので、東北の山々と異なって温暖で冬は乾燥する本州南岸地域の山々は、ブナにとって最高の環境という訳ではない。それでも、夏山の深い霧はブナをやさしく育んでいる。




透き通るようなグリーンの、ブナの葉。本州南岸のブナは東北のブナよりも葉の大きさが小振り、とされる。




この素晴らしい原生林を、1時間30分で一周してしまうのはあまりに勿体ない。森にどっぷり浸かってしまいたい気分。




オオモミジの大木。まだら模様の樹皮に、貼り付く苔。









ヒメシャラの大木。赤銅色のスベスベした独特の樹皮は、森でひときわ目を惹く。




こちらはオオモミジの巨木。がっしりとした胴回りだ。




函南原生林はおよそ230ヘクタールの原生林であるが、そのうち102ヘクタール(100m四方×102)は自然環境保全地域に指定された。その大半は特別地区とされている。




散策路の頭上、斜めに大きく伸びるケヤキの巨木。里で見かけるすっきりとした樹形のケヤキとは一味異なる。









道が分岐している。




木道が渡された側へ。




木製デッキが設けられている。




デッキ周辺にそびえるのは、ブナの大木。














かつてこの森の主として聳えていた、大ブナのメモリアル。 解説板拡大版

いつかは会いたいと思いながら機会を失し続け、とうとう永遠に会えなくなってしまった。

ただでさえ樹勢が衰えつつある老木は、世間の耳目を集めるとたちまちオーバーユース状態となってしまう。人々がフカフカの土壌で覆われた根元を踏み固めてしまうと下草が消失する。そこに大雨でも降れば表土はあっさりと流され根がむき出しになっていく。それはゆっくりと時間をかけて地表に現れた根とは違って、表皮はぜい弱でありダメージに弱い。

人がじわじわと与えてしまったダメージは、それでも一気の開発とは比べるべくもなく十分に回復可能ではあるが、この大ブナにとっては残念ながら一線を越えてしまった。散策愛好家として、大自然にはいつでも畏敬の念をもって接していきたい。




隣りの大ブナ。




幹をよじるようにくねらせ、伸びる。深山の環境が風雪厳しく、決して優しいものではないことを物語る。




再び、学習の道へ。




イヌシデの大木。ゴツゴツとした樹皮。




道を塞ぐ、アカガシの倒木。原生林では、倒木は倒木のまま人に手を掛けられることなく朽ちていき、次世代へとつながっていく。









ケヤキの大木。




ずいぶんと森を下ってくると、やがて小広く開けた広場に出る。




そこには道標が整備されている。




奥は原生の森公園へ通じる道。




観察広場方面へ。









学習の道で、いちばん大きな広場となる観察広場。




観察のための解説板。  解説板拡大版




いつしか霧が晴れ、サッと光が差し込んできた。




森の精に出会えそうなひととき。




観察広場から、さらに下っていく。




沢を横切る木橋。




沢は、来光川(らいこうがわ。狩野川の支流)の源流。
箱根山を源とする来光川は、やがて天城山系に源を発する狩野川(かのがわ)に合流、流れ下って沼津で駿河湾に注ぐ。

このあたりから学習の道は、どんどんと標高を上げていく。




ヒメシャラ。




この辺りにはブナやヒメシャラの大木が多い。









すっと真っ直ぐに伸びるブナ。




出口に向けてひたすら登っていく。




富士箱根ランド側出口への分岐まで来た。ここから県道側出口へ向かう。




そのまえに、富士箱根ランド側への道に目をやる。ほんの十数メートル先に、「あっ」と息をのむ巨木が。




森の主、アカガシの巨木。それは圧倒的な存在感。




綱を締め上げたようなどっしりとした幹は、根回りが10mを優に超える(「森の散歩道・関東周辺の森歩き27選」より)。周りの木々がまるでもやしのよう。




光が差し込み、浮かび上がる樹の姿。この木に会えただけでもこの森に来た甲斐があった。

分岐に戻り、県道側出口へ。




毒々しいまでに鮮やかなキノコは、なんというキノコだろうか。




県道出口までは登り一辺倒ではない。沢を渡る個所もあるため、上り下りもある。




間もなく開花の、ウバユリ。




苔むす岩がゴロゴロの沢を渡って対岸へ。




沢の上流側。今は枯れているがびっしりとコケが生えているので水はそう少なくはないのだろう。




あっと口を開けたような、ヒメシャラのうろ。









巨大な倒木が道に横たわっている。




暴風雨か、はたまた落雷かでバーンと裂けたと思われる、生々しい傷跡。その瞬間凄まじい光景が広がったのだろうか。




倒木の上は、ぽかっと空が開く。こうして大量の光が降り注ぎ、地表では新たないのちが芽吹いてゆく。









まだ倒れて幾らも経っていないケヤキの倒木。原生林のあちこちで、生命の循環が行われていく。









すっかり明るくなった、真夏の午後の森。




再び枯れた沢を渡る。よく見れば、対岸の右奥に道が続いている。




山歩きに慣れない人は、間違えて沢の上流に入ってしまわないようにしたい。万一道を間違えてしまったら終バスの時間までに、おそらく帰れない。
ここは公園ではなくあくまで必要最小限の登山道が整備された原生林。安易な入山は慎みたい。




対岸に上がり、道の続き。









いちばん最初の分岐に戻ってきた。あとは県道出口に向けて、ひたすら登る。




出口が口を開けて待っている。




午後4時5分、原生林入口に戻ってきた。入山した時とはうって変わって、青空が広がっている。気温は26度。




箱根峠方面。向こうへのバスは、もうない。待つこと20分、クルマがひっきりなしに目の前を過ぎてゆく。




熱海駅方面。来たときは霧に包まれた辺り一帯だったが、バス停から学習の道入口はこんなに近い。

このあと、最終バスでJR熱海駅へ。


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